大千秋楽前日になってしまいましたが、今さら感満載ながら、KAAT公演「銀ちゃんの恋」の感想第2弾を。
今回は主に飛龍つかささんのヤスについて。やはり長いです(笑)
キャストが発表になる前からこの方に違いないと思っていましたが、SNSでも大好評で話題になっていた飛龍つかささんのヤス。
今回、これまで演じていらした方々とはひと味違うヤス像に目から鱗でした。拝見できて良かったです!
宝塚の歴代の方々の中で、個人的に印象深かったヤスは、映像で拝見した華形ひかるさん。ある意味宝塚らしくないともいえるのかもしれませんが、台詞回しや身のこなしに生活感や卑屈さが滲み、良い意味でリアルで癖の強い役作りが素晴らしく、特に心に残っています。
そして、その華形さんをTHE 昭和なヤスとするならば、今回の飛龍さんは昭和の香りを良い塩梅で取り入れつつも、くど過ぎないナチュラルな演技で(といっても元のキャラ設定が濃いので、充分個性的ではあるのですが)、現代人にも感情移入しやすいヤス像を築かれているように思いました。
飛龍さんのヤスにおいて興味深かったのは、これまで私がヤスという役に抱いていた、コンプレックスや屈折感といった闇を抱えたイメージとはまた違ったアプローチで役作りされているように感じられたことです。
銀ちゃんへの一途な思い入れは勿論のこと、映画との向き合い方や小夏への接し方も含めて、むしろ真っ直ぐすぎるほどに真っ直ぐで、ひたむきな青年であるように感じられました。
そのためか、実は最初は若干あっさりしている印象を受けてしまったのですが、物語が進むに連れ、徐々に飛龍さんのヤスの妙味がわかってきたような気がします。
たとえば、銀ちゃんの舎弟になる道を選んだこと、そして、階段落ちをやると決めたこと。これは、平凡で保守的な人生も歩めたであろうヤスという人物にとって正に二大決心であったように思うのですが、「安住と平穏」を捨てた上、誰もが怖気づくような命を懸けた決断をすることの重さが、純で真っ直ぐなヤス像ゆえに、より心に響く。
また、銀ちゃんとの関係性が崩れていく2幕では、曇りがなく、ひたすら一途な役作りであったからこそ、彼の中に初めて不安や苛立ちが生じ、ドロドロした人間らしい感情が噴き出していく様が鮮烈に胸に迫ってくる。
飛龍さんのヤスからは、こうした意外性を通じて、次第にその生き様に惹き付けられていく面白さを感じました。
いわば、場面毎のインパクトでみせるというよりは、もっと大きな流れの中で魅せていくヤスであったように思います。
令和初の「銀ちゃんの恋」で、こうした新たなヤス像に出会えたことも、再演の醍醐味の一つといえるのかもしれません。
また長々と語ってしまいました(笑)。
本当は、星空美咲さんの小夏の嘘がない等身大の演技や、コメディ要素に溺れ過ぎず、芝居として成立させていた糸月雪羽さんの玉美、「悲しい日々」で都姫ここさん扮する朋子にグッときてしまったことなど、他にも語りたいことは沢山あったのですが、時間がなくて書ききれませんでした!またいつか。
明日はいよいよ千秋楽。
大阪公演を劇場で観ることは叶いませんが、かなり進化されているとか。こんなに中身の濃い公演がもう終わってしまうのは勿体ない気もしますが、出演者の方々の役者魂に心の中で拍手を送りつつ、無事に完走できることを祈ります。
そして、またいつか劇場で観る機会があったらいいな。