宝塚花組東京公演「はいからさんが通る」感想4:永久輝せあさんの高屋敷要、華優希さんの花村紅緒ほか

(感想千穐楽配信

千穐楽を迎えてしまいましたが、今更すぎる主観的雑感その4です。

まずは、今回、花組東宝劇場公演デビューの永久輝せあさん扮する高屋敷要。

高屋敷要は、原作よりかなり重要性が増した役にグレードアップされていて、とても見応えがありました。

永久輝さんというと、王子様が似合う正統派男役のイメージがありましたが、そんなオーソドックスなかっこよさを持つ方が、バンカラで少しむさ苦しさのある高屋敷を演じる妙味とでも申せましょうか。高下駄を鳴らしながらガシガシ歩くお姿や、頭をかく姿、ボリュームのある頭髪…と、所謂2枚目キャラではない高屋敷を永久輝さんが演じることで、「あの仕草や風貌がたまらないのよね!」と唸ってしまう位、魅力的に。実はかなりイケメンであることに気付いてしまったが最後、気になってついつい眼で追ってしまう!

相手の懐にズカズカ踏み込むも、どこか憎めない人懐っこさと、その中に滲む作家特有のインテリジェンス、和を感じさせる高屋敷さんをご自身も楽しみながら演じていらっしゃる印象を受けました。

個人的には、音くり寿さん演じる環を見つけた途端、タジタジになりながらも、2幕冒頭の大正デモクラシーを始め、懐っこい笑顔で環のお顔を覗きこむ姿が素敵だなと感じました。

そして、永久輝さんも、特に軍服バージョンのフィナーレがとても印象的で、雪組からいらした新鮮なオーラを放たれている気がしました。

最後に、華優希さん扮するヒロイン花村紅緒について。

華さんは、ご本人のもつ元来のキャラクターが、健気な紅緒像にも投影されている気がしました。

漫画の紅緒は、淑女にあるまじきドジさやいい加減さ、時にはしたないと思えるような部分や、ちゃっかりした面も持った驚くほど型破りな女の子で、そんな中にも、少尉に対する純粋過ぎる程に一途な思いや、人に対して恩を忘れない、一本筋の通った凛とした部分が見える瞬間がとても魅力的なんですよね。

華さんは、健気さと一本義な性格は原作に近いまま、型破りの中にも観る者をドン引きさせ過ぎない宝塚らしさも残した絶妙なバランスの演技で、皆に愛されているのが伝わってくる微笑ましい紅緒像でした!

娘役さんも、華雅りりかさん、朝月希和さん、音くり寿さん等々、大活躍で、花組は男役さんだけでなく、娘役さんも層が厚い組であることを実感させられました。朝月さんは雪組に組替えされ、トップ娘役に就任されるとのことで、益々今後のご活躍が楽しみです。

宝塚花組東京公演「はいからさんが通る」感想3:水美舞斗さんの鬼島軍曹

宝塚の「はいからさんが通る」感想その3。(感想千穐楽配信

もう千穐楽だというのに今更感満載ですが、気紛れ雑感ということで、お許しください。

今回は、水美舞斗さん扮する鬼島森吾について。

本編では1幕の終盤、少尉と鬼島らが所属する第十二小倉師団が派兵されたシベリアの場面からのご登場。それまでの伊集院家や花の東京の華やかな雰囲気とは打って変わって、非常に厳しい環境下。男性しかいない中でも、一際ワイルドな鬼島のキャラクターはとても新鮮で魅力的に映りました。(ちなみに鬼島といえば、原作の番外編にある彼の過去のエピソードは本当に心に刺さるもので、読んでみると、また一つ鬼島という人物に対する理解が深まる気がします。)

そして、巷!?で話題になっているのが、鬼島の軍服の開襟。その深さもさることながら、個人的には物理的な襟の開き具合(笑)よりも、そこから漂う強烈な色気に衝撃を受けました。宝塚の男役さんというと、ショーなどで、衣裳によっては中性的(あるいは女性的)な色気を感じさせることは度々ある気がするのですが、今回、水美さんの鬼島軍曹から感じられたのは、紛れもなく男性の色気であったような!?(←勿論、あくまでも主観ですが。)男役・水美舞斗ここにあり!といった円熟味を垣間見せていただいたように思いました。

それから、今回、興味深く感じた部分といえば、鬼島軍曹は、野性味に溢れていて男臭く、一匹狼的な一面をもちながらも、どこか人情味もあるような人物像であり、水美さんもその辺りを絶妙に捉えた演技をされているのですが、一方で、水美さんの鬼島軍曹からは、鼻筋から口にかけてのライン、涼しげな目元といったお顔立ちの印象もあるのか、または水美さんご本人の内面的な部分に起因しているのか、非常に繊細な美しさを感じさせる瞬間があったことでした。

このため、水美さんの鬼島軍曹には、ワイルドな男性の色香と、ガラス細工のような儚さが混在しているように思えて、そのある意味アンバランスで、何とも独特な両面性に心をつかまれてしまうというか。

水美さんといえば、漢らしい男役さんという印象があり、勿論、そんな部分も魅力的だと思うのですが、今回の舞台を拝見して、逆に、研ぎ澄ました刃のような鋭さと、それゆえの脆さを感じさせるような役(例えば日本物とか?)も観てみたいなと思わされました。

男役10年とはよく聞きますが、宝塚の男役さんには、その魅力にグッと深みが増す時期があるように思います。そういう意味でも、水美舞斗さんがどのような男役像をみせてくださるのか、今後がとても楽しみです。