轟悠さんバウ初主演「恋人たちの神話」について(若干ネタバレ/スカステ鑑賞)

今日はスカイステージで、轟悠さんのバウホール初主演作「恋人たちの神話」が放送されていましたね。スカイステージでは割と多く放送されている印象があるのですが、1992年ということで、かなり前の貴重な映像だけに、思わずいつも見てしまいます。

この作品で扱われているテーマは、宗教。神の存在や宗教観について、かなりギリギリの線まで踏み込んで描かれていることに驚かされます。宝塚という夢の世界において、無難な路線ではなく、敢えて宝塚らしい作品とは毛色の異なる世界を選ばれたところに、当時は若手でいらした演出・脚本の石田正也さんのチャレンジ精神をみた気がしました。

轟悠さん演じる九十九神之助は、あるきっかけで、小心者でうだつが上がらないが、心優しい青年から、圧倒的カリスマ性とクールさをもつ華やかな男性に変わってしまう役どころ。

二役ではなく、一人の人間が全く異なるキャラクター同士を行き来するという発想がとても興味深かったです。(そういえば最近では、永久輝せあさんの初主演作も一人二キャラクターを見事に演じていらっしゃいましたね!)

男役・轟悠さんといえば、アドリブ力やコメディセンスをお持ちの可愛らしい面と、立っているだけで存在感がある線の太い男性的な面が魅力的な方なので、初主演作で両方の面が活きるように描かれた石田氏の手腕もお見事だと感じました。かなり前の作品ということで、存在感やオーラの中にもどこか轟さんの初々しさを感じられたのも新鮮でした。

そして、新鮮といえば、二番手ポジションは香寿たつきさん。普段はいぶし銀の大人な役どころが多い印象がありましたが、この作品ではプレイボーイもとてもはまっていらして素敵でした。

それから、新之助にライバル心をもつ教祖役の泉つかささん、新之助の勤める会社の榊原翔子部長役の早乙女幸さん、超心理学の権威の門松教授役の岸香織さんをはじめ、この作品には演技達者な方が非常に沢山出ていらっしゃるので、それぞれのキャラが立ち、全く飽きないのが素晴らしいなと思います。

演技達者な方といえば、後に新之助が教祖となる宇宙教の幹部の高見沢役を演じられている和光一さんもとても良い味を出されているのですが、そのお顔立ちと、作品をグッと支えるポジションが現雪組の久城あすさんととても似ていらっしゃるように思えて、かなり注目してしまいました。個人的な印象でしかありませんが。

OGの方の中に現役の方の面影を観られるのも、昔の作品を映像鑑賞する時の面白さの一つといえるかもしれません。(余談ですが、久城さんといえば、映像観劇ではありますが、「義経妖狐夢幻桜」のエイサイでの良い意味で癖のある演技が、お上手過ぎて未だに忘れられません。今後のご活躍も楽しみです!)

それからこの作品、歌詞も、含蓄あるフレーズや、面白い言い回しが多用されていて、見どころ(聴きどころ)の一つである気がします。

また、轟さんの着ていらっしゃる鮮やかな紫色のジャケットや、モデルの星川レイコ役の五峰亜季さん(当時から抜群のプロポーション!)の身体のラインが出る衣裳は、バブル時代を思い出させるものがありますが、そんなある意味濃い時代性も含めて、この作品の世界には合っているように思いました。

時々放送される昔のバウホール公演も、注目してみると、時代性やテーマ、キャスト・スタッフ方々の冒険心を感じられて良いものですね。 現在も、才能溢れる若手脚本・演出家が多くいらっしゃる宝塚歌劇団ですが、バウホール公演では、時に王道ではないけれど、出演者の方々の魅力を最大限に引き出すような冒険作を今後ももっと観ていけたらと期待しています。

宝塚雪組「華麗なるギャツビー」の思い出。

「グレート・ギャツビー」が、宝塚に続いて、東宝と梅田芸術劇場(で合ってるかしら!?)でミュージカル化されましたね。

それで思い出したのが、宝塚初演の雪組の「華麗なるギャツビー」。残念ながら、月組公演は観そびれてしまったので、雪組公演の思い出を書きたいと思います。

雪組公演は、当時、ミュージカル評論家からも高評価の話題作だった記憶があります。
杜けあきさんのギャツビー、鮎ゆうきさんのデイジー、一路真輝さんのニック、海峡ひろきさんのトム、美月亜優さんのマートル、早乙女幸さんのジョーダン、古代みず希さんのジョージ・・・思い返せば、主なキャストが皆さん、はまり役でした!フィッツジェラルドの原作がもと=あてがきではないのに、凄いことですよね。

中でも、やはり杜さんのギャツビーの影、包容力、大人の男の存在感は秀逸でした!宝塚版の主題歌ともいえる「朝日の昇る前に」を歌う前、海を見つめる後ろ姿に、男役は、後ろ姿でも魅せるものなんだなと感じたことを覚えています。

そして、鮎さんのデイジーも高貴な美しさがあり、素晴らしかったです。人妻であるだけではなく、その美貌ゆえに手が届かない存在として映る鮎さんの気高いデイジーが、杜さんのギャツビーをより際立たせたといっても過言ではない気がします。

そして、清潔感があり、とにかく美しいのに親しみやすく、憎めない一路真輝さんのニック。ゴルフ場でミスショットを連発する姿や、ジョーダンと恋の心構えを歌う「愛のファイナル・ショット」でのコミカルな演技など、陽性な雰囲気でギャツビーと好対照をなしていました。

他にも、当時、若手だった香寿たつきさんが、朱未知留さんと歌われた「レクエルド」の色気のある歌声など、観劇の思い出を挙げればきりがありません。

今回の「グレート・ギャツビー」は、宝塚と同じ小池修一郎さん脚本・演出ですが、作曲はブロードウェイでもご活躍のリチャード・オベラッカーさんとのこと。井上芳雄さんをはじめとするキャスティングも含め、また新たな、魅力的なギャツビーワールドが展開されていることでしょう。
私は残念ながら観劇予定がないのですが、作品の益々の発展を祈ります!