日下武史さんのモーリスとマシュー。

劇団四季の創立メンバーのお一人、日下武史さんが亡くなられたそうですね。

日下さん、大好きな役者さんでした。
印象に残る役は、「美女と野獣」のヒロインベルの父、モーリス。そして、やはり、「赤毛のアン」のアンの養父のマシューでしょうか。

「美女と野獣」では、ポンコツの発明車を運転するモーリスの純粋な姿が何とも憎めなくて。
特に好きだったのは、ベルと親子の愛を歌う“二人で”の場面。
日下さんのモーリスを観ていると、「娘は父親が大好き」というベルの歌詞に思わず共感し、「時が経っても このまま 今のお前でいてほしい」と歌うモーリスの素朴な声の響きに、気づけばホロっときている自分がいるのです。ミュージカルではよくある微笑ましい1曲が、いつの間にか大好きになっていたとき、日下さんという役者さんの素晴らしさを実感した気がします。

因みに、当時のベルは濱田めぐみさん、ビーストは石丸幹二さんでした。前売開始日、朝早く並んでチケットを取ったことも含めて、懐かしい良い思い出です。

そして、「赤毛のアン」のマシュー。
当初、男の子を養子に迎えるつもりだったマシューが、いつしかアンと心を通わせ、息を引き取る間際、男の1ダースよりもアンの方が良かったという場面は忘れられません。あの場面で急に胸が熱くなるのは、そこに至るまでの間に、マシューのアンへの愛情が観る者の心にしっかりと刻まれているからなのでしょうね。

因みに、アン役は、野村玲子さん、吉沢梨絵さんで観たことがあるのですが、お二人もはまり役でとても素敵でした。(中でも、個人的には、シリアスな作品のイメージが強かった野村さんの見事なコメディエンヌ振りが凄く印象に残っています。)

台詞回しも表情も本当に自然なのに、気づけば観客の心を掴み、しかも、その役だけではなく、作品の魅力をそのまま観客の心に届けてくれる。今、思い返すと、日下さんはそんな役者さんであったように思います。
1ミュージカルファンとして、感謝の気持ちで一杯です。寂しいですが、私はこれからも日下さんの舞台を度々思い出すことでしょう。
心よりご冥福をお祈りいたします。