宝塚花組東京公演「はいからさんが通る」:千穐楽ライブ配信雑感

感想(感想

「はいからさんが通る」、ついに全公演終演。

ここまで長い道程となるとは、誰も予想だにしていなかったと思います。宝塚での初日の延期、公演休止も乗り越え、東京ではやっと無事に完投され、迎えられた千穐楽だと思うと感極まるものがありますね。

最近、ライブ配信にはまっている私は、千穐楽もしっかり視聴させていただきましたが、出演者の方々の熱気は勿論のこと、客席の拍手の一体感にも感動!舞台上で全力で演じるエネルギーと、それを受け取ってさらに熱く返す客席からのエネルギーの相乗効果とでもいうのでしょうか。正に場内が一体となっているのが、画面越しにも伝わってくる素晴らしい公演でした。

アドリブも随所に。

牛五郎から紅緒への「正露丸をお飲みなせんしゅうらく」(憎めなさ全開)、ソファーでおでこに軽く口づけされ、固まった紅緒を見た少尉の「(動きが)止まった」(はけられた後にじわじわくる)、鬼島から環への「お前、俺に惚れてんだろ」(環さんとファンの方の心を骨抜きにする反則技。笑)など、花組の皆さまのサービス精神に脱帽です。

また、フィナーレの黒燕尾の群舞は、大階段で足を大きく広げたポーズのしなやかさで、冒頭から観る者の心を掴む柚香光さん、渋い大人の色気を振り撒く瀬戸かずやさん、彫刻のような美貌から濃厚な色気を放つ水美舞斗さん、正統的な品の良さで魅せる永久輝せあさん、瑞々しくも耽美的な聖乃あすかさんをはじめ、正に美の集結。

そして、柚香さんの千穐楽のご挨拶からは、この経験を糧に前進していきたいという強い意志が感じられました。花組公演では恒例であった花組ポーズも久々に復活。無事に千穐楽を終えるまで封印されていたそうで、決まった後、柚香さんの「できた!」の一言と満面の笑顔の眩しさにこちらまで幸せな気持ちに。

千穐楽ということで、やはり一抹の寂しさは覚えますが、このような状況の中、年内最後だからこそ、作品、宝塚、花組の魅力を余すところなく伝えよう!という出演者の皆さまの意気込みが伝わってきて心が満たされ、寂しさを上回るほどの充実感で一杯になりました。

素敵な時間に感謝!

長すぎる主観的雑感へのお付き合い、どうもありがとうございました。

宝塚花組東京公演「はいからさんが通る」感想4:永久輝せあさんの高屋敷要、華優希さんの花村紅緒ほか

(感想千穐楽配信

千穐楽を迎えてしまいましたが、今更すぎる主観的雑感その4です。

まずは、今回、花組東宝劇場公演デビューの永久輝せあさん扮する高屋敷要。

高屋敷要は、原作よりかなり重要性が増した役にグレードアップされていて、とても見応えがありました。

永久輝さんというと、王子様が似合う正統派男役のイメージがありましたが、そんなオーソドックスなかっこよさを持つ方が、バンカラで少しむさ苦しさのある高屋敷を演じる妙味とでも申せましょうか。高下駄を鳴らしながらガシガシ歩くお姿や、頭をかく姿、ボリュームのある頭髪…と、所謂2枚目キャラではない高屋敷を永久輝さんが演じることで、「あの仕草や風貌がたまらないのよね!」と唸ってしまう位、魅力的に。実はかなりイケメンであることに気付いてしまったが最後、気になってついつい眼で追ってしまう!

相手の懐にズカズカ踏み込むも、どこか憎めない人懐っこさと、その中に滲む作家特有のインテリジェンス、和を感じさせる高屋敷さんをご自身も楽しみながら演じていらっしゃる印象を受けました。

個人的には、音くり寿さん演じる環を見つけた途端、タジタジになりながらも、2幕冒頭の大正デモクラシーを始め、懐っこい笑顔で環のお顔を覗きこむ姿が素敵だなと感じました。

そして、永久輝さんも、特に軍服バージョンのフィナーレがとても印象的で、雪組からいらした新鮮なオーラを放たれている気がしました。

最後に、華優希さん扮するヒロイン花村紅緒について。

華さんは、ご本人のもつ元来のキャラクターが、健気な紅緒像にも投影されている気がしました。

漫画の紅緒は、淑女にあるまじきドジさやいい加減さ、時にはしたないと思えるような部分や、ちゃっかりした面も持った驚くほど型破りな女の子で、そんな中にも、少尉に対する純粋過ぎる程に一途な思いや、人に対して恩を忘れない、一本筋の通った凛とした部分が見える瞬間がとても魅力的なんですよね。

華さんは、健気さと一本義な性格は原作に近いまま、型破りの中にも観る者をドン引きさせ過ぎない宝塚らしさも残した絶妙なバランスの演技で、皆に愛されているのが伝わってくる微笑ましい紅緒像でした!

娘役さんも、華雅りりかさん、朝月希和さん、音くり寿さん等々、大活躍で、花組は男役さんだけでなく、娘役さんも層が厚い組であることを実感させられました。朝月さんは雪組に組替えされ、トップ娘役に就任されるとのことで、益々今後のご活躍が楽しみです。