宝塚花組東京公演「はいからさんが通る」感想3:水美舞斗さんの鬼島軍曹

宝塚の「はいからさんが通る」感想その3。(感想千穐楽配信

もう千穐楽だというのに今更感満載ですが、気紛れ雑感ということで、お許しください。

今回は、水美舞斗さん扮する鬼島森吾について。

本編では1幕の終盤、少尉と鬼島らが所属する第十二小倉師団が派兵されたシベリアの場面からのご登場。それまでの伊集院家や花の東京の華やかな雰囲気とは打って変わって、非常に厳しい環境下。男性しかいない中でも、一際ワイルドな鬼島のキャラクターはとても新鮮で魅力的に映りました。(ちなみに鬼島といえば、原作の番外編にある彼の過去のエピソードは本当に心に刺さるもので、読んでみると、また一つ鬼島という人物に対する理解が深まる気がします。)

そして、巷!?で話題になっているのが、鬼島の軍服の開襟。その深さもさることながら、個人的には物理的な襟の開き具合(笑)よりも、そこから漂う強烈な色気に衝撃を受けました。宝塚の男役さんというと、ショーなどで、衣裳によっては中性的(あるいは女性的)な色気を感じさせることは度々ある気がするのですが、今回、水美さんの鬼島軍曹から感じられたのは、紛れもなく男性の色気であったような!?(←勿論、あくまでも主観ですが。)男役・水美舞斗ここにあり!といった円熟味を垣間見せていただいたように思いました。

それから、今回、興味深く感じた部分といえば、鬼島軍曹は、野性味に溢れていて男臭く、一匹狼的な一面をもちながらも、どこか人情味もあるような人物像であり、水美さんもその辺りを絶妙に捉えた演技をされているのですが、一方で、水美さんの鬼島軍曹からは、鼻筋から口にかけてのライン、涼しげな目元といったお顔立ちの印象もあるのか、または水美さんご本人の内面的な部分に起因しているのか、非常に繊細な美しさを感じさせる瞬間があったことでした。

このため、水美さんの鬼島軍曹には、ワイルドな男性の色香と、ガラス細工のような儚さが混在しているように思えて、そのある意味アンバランスで、何とも独特な両面性に心をつかまれてしまうというか。

水美さんといえば、漢らしい男役さんという印象があり、勿論、そんな部分も魅力的だと思うのですが、今回の舞台を拝見して、逆に、研ぎ澄ました刃のような鋭さと、それゆえの脆さを感じさせるような役(例えば日本物とか?)も観てみたいなと思わされました。

男役10年とはよく聞きますが、宝塚の男役さんには、その魅力にグッと深みが増す時期があるように思います。そういう意味でも、水美舞斗さんがどのような男役像をみせてくださるのか、今後がとても楽しみです。

宝塚花組東京公演「はいからさんが通る」感想2:瀬戸かずやさんの編集長ほか

宝塚の「はいからさんが通る」感想2。(感想千穐楽配信

それにしても、プロローグからの花組の皆さまの並びの華やかなこと!

今回のように、メインキャラクターが一堂に会する顔見せ(?)的なプロローグは、ミュージカル、殊に原作がある作品の見どころの1つですよね。

特に、少尉の柚香光さんを筆頭に、編集長の瀬戸かずやさん、鬼島軍曹の水美舞斗さん、高屋敷要の永久輝せあさんの並びは圧巻。皆さん個性は異なれど、お一人残らず美しい!もうどなたを観たら良いのやら、無駄に焦ってしまいました(笑)。

でも実は、これは宝塚を観る時の悩みの一つでもありまして。群舞等は、俯瞰だと前方席でない限りはしっかり表情が見えないし、オペラグラスを使うとお一人しか入らない。で、一体どうすれば?!と思っている内に場面が終わってしまうんですよね。今回も、プロローグやフィナーレでもこんな事態が発生。要は眼が5つ位欲しい!と真面目に思います。

さて、今回、出演場面が後半に集中しているのが、瀬戸かずやさん扮する編集長と、水美舞斗さん扮する鬼島軍曹。

特に瀬戸さんは、プロローグを除くと、1幕は吉次姐さんたち芸者とすれ違う一瞬のみだった気がします。しかし、その場面がインパクト大!

宝塚や原作をよくご存知の方なら、「瀬戸さん(編集長)ご登場―!」と興奮するところですが、あまり詳しくない方が観たら、「ここにきてかなり濃いキャラクターの方がいきなりの登場!?しかも一瞬。気になる!」からの、2幕の冗談社でおおいに納得。という流れになる気もして、伏線としては効果抜群だなと勝手に想像して楽しんでしまいました。

編集長役、映像で拝見した初演の鳳月杏さんもスッとされていてとても素敵でしたが、瀬戸さんの編集長は、より少女漫画要素が強く、個性的なキャラクターに感じられました。

ベルばら然り、少女漫画が原作の舞台って観ている方が思わず赤面してしまうような名台詞が多い気がするのですが、「はいからさんが通る」での名台詞担当はやはり青江冬星氏ではないでしょうか。

そして、瀬戸さんも、よくその役割を心得ていらっしゃるような気がして、紅緒をグッと抱き寄せながらの「全部、忘れさせてやる」、終盤の「来たな、恋人」などのセリフが絶妙に決まる!客席で秘かに身悶えしつつ、心を鷲づかみにされながら、今回も存分に堪能させていただきました。これぞ宝塚における少女漫画のミュージカル化の醍醐味!

そして、瀬戸さんといえば、今回、個人的にはフィナーレも印象深かったです。

本編終わっての銀橋ソロ(別名、歌唱指導?)って、役ではなく、そのスターさんとして歌われる演出が多いので、その変わり身がまた素敵なんですよね。

特に今回、編集長はトレードマークとも言えるロングヘアーの鬘の印象が強いですが、この場面では、地毛の爽やかなショートヘアーで登場される上に、温かな笑顔を浮かべられているので、そのギャップに心を奪われずにはいられませんでした。

また、前述の場面とは打って変わって、男役群舞の軍服で踊られる渋いお姿(大正バージョン)も正に大人の男(役)という感じでたまりません。短時間で多彩な魅力を振り撒かれる瀬戸さん、素晴らしいです。